オンラインでのビデオ会議はなぜ疲れるのか?【Zoom疲れの原因】

リモートワークの普及で叫ばれる、Zoom疲れならぬビデオ会議疲れがなぜ起こるのか、複数の原因をそれぞれ詳しく説明します。

オンラインでのビデオ会議はなぜ疲れるのか?【Zoom疲れの原因】

2020年は新型コロナウイルスによるリモートワーク・テレワークの普及により、必然的にオンライン会議が急増しました。ZoomやGoogle Meet、Microsoft Teamsなどを使ったそれらオンラインでのビデオ会議の経験者の多くが感じたのが「思った以上に疲れる」ということではないでしょうか。実際、Twitterでも毎日のようにそんなツイートが見受けられます。

今回は個人的に原因が気になったのもあり、自分なりにこうであろうという仮説のもと、オンライン会議はなぜ疲れるのか、という理由についてまとめました。(尚、ここでオンライン会議は映像ありのビデオ会議を前提とします。)

ちなみに日本語でもZoom疲れという言葉をたまに目にするように、英語圏でも Zoom fatigue という同じ意味の言葉が少し前からよく使われるようになりました。


音に集中する必要がある

オンラインのビデオ会議ではオフラインと比べ、相手の声を「意識して」聞く必要があり、それを持続させる忍耐力と集中力が求められるように思います。

ここは推論ではありますが、オフラインの場合は空間的(三次元的に)に音を把握できますが、リモートの場合はすべての音がパソコン等使用している機器のサウンドシステムからのみ出力されるので、空間的に音を認識することができず、そのため相手の声にいつも以上に集中しなければならないのだと思います。特に3人以上が参加する会議の場合は、無意識ながらより集中力を使っているように感じます。

さらに、ちょっとでも音質が悪かったり周囲の雑音が入ってしまうと、言葉により一層集中する必要がでてきます。また、相手の音声入力ボリュームが小さいと、さらに集中力を必要とします。

非言語の情報の欠如と映像の解像度

ひとは相手の姿勢や表情、うなずきなどのちょっとしたしぐさなど、非言語的な手がかりからもさまざまな情報を読み取っています。そうした非言語的な手がかりがない、あるいは少ないということが無意識に消耗につながっていると心理学者は説明しています

相手の表情やしぐさがわかりにくいということは、自分の伝えたいことが相手にしっかり伝わっているか不安になるということにも繋がります。そういったオフラインではほぼ必要のない追加の思考プロセスなども積み重なって心理的あるいは精神的な負担となるのかもしれません。

また、パソコンの液晶画面のスペックが低かったり、そもそも通信環境が悪く解像度が荒くなったり、あるいはスマートフォンなど画面サイズが小さい場合は、さらに収集できる非言語の情報が少なくなるため、余計に疲れます。

時差(遅れ)

通信の用語ではレイテンシーと言われる、微妙な遅延や時差がどうしても発生するのがオンラインの特徴です。この遅れは一般的に往復の通信で0.3秒〜とも言われていて、オフラインであれば声という音は一瞬で相手の耳に届きますが、オンラインでは物理的な距離がある以上、いくら通信インフラが発達したとはいえ、どうしても多少の遅延が発生します。

特に一方的なトークではない相互間で言葉のやりとりを行うディスカッション形式の場合、毎回毎回この微妙な遅れがずっと発生します。このコンマ何秒という間も相手の言葉を聞き取るためにアンテナを貼って意識をそこに集中している状態なので、その継続的な集中が疲れに繋がるのだと思います。

同じ内容でもほぼ確実に時間が長くかかる

上で述べたレイテンシーにも関係しますが、オフラインではある程度同時に複数人がしゃべったとしてもたいがい誰が何と言ったかを聞き取ることができます。また、オーバーラップした場合もどちらが話し続けてどちらがストップするかを表情や身振り手振りで瞬時に合意形成できます。これがオンラインの場合だと、そもそも複数人が同時に話した場合、両方とも聞き取れないことも多く、聞き取れたとしても片方だけ。そしてオーバーラップが発生した場合どちらが話し続けるかの合意形成も取りにくいという問題があります。このような複数人が同時に話した場合の問題等の理由から、全く同じ内容を話し合ったとしても、確実にオンラインの方が時間がかかってしまうように思います。

オンラインの会議だと合意形成までに想定以上の時間がかかった、というような体験をした人も多いのではないでしょうか。

画面をずっとみている

オフラインであればパソコンの画面を見ている時間より、参加者の顔を見たり、ホワイトボードを見たり、紙の配布資料を見たりと、液晶以外のものを見ている時間の方が圧倒的に長いはずです。反面、ビデオ会議の場合は液晶画面というひとつの情報源を長時間直視しなければならず、眼精疲労を引き起こします。ただでさえ近年のデスクワークでは昔と比べて画面を見ることが多くなったと言われていますが、ビデオ会議の増加は目からの疲労がさらに進む原因と言えます。

そして参加者の顔が一覧で並ぶギャラリービューでは、さらに一段と疲れるように思います。

姿勢

オフラインであれば会議室であってもイスにゆったり腰掛けたり、ある程度体勢を変えることができますし、場合によっては立ち上がったり歩き回ったりといったこともできます。また、打ち合わせによってはお茶や食事をしながらということもあり得えます。一方ビデオ会議の場合は、通常はカメラの位置が固定されていることもあり、長時間ほとんど動かないケースや、ずっと前のめりでパソコンに向かっている、ということも多いかと思います。

移動がないため連続の会議が可能、そして回数も増える傾向

オンラインは会議室の移動といった物理的な移動が一切不要で、同じパソコンの前で立て続けに連続してミーティングを行うことができてしまいます。もちろん意識的にバッファーを取ればいいのですが、忙しい場合などは連続して入れてしまうこともあるかもしれません。実際それが物理的にできてしまうので。気を張ったままの会議を連続して行うというのは当然疲れるものです。

また、リモートワークでは会議の回数が増える傾向にあるとも言われています。これもビデオ会議が疲れるということに影響しているように思います。

会議の質が落ちる場合も

これはケースバイケースではありますが、オンラインではファシリテートやホワイトボードなどのツール、プロジェクターや紙を使った情報(資料)共有方法、そしてそれらを複合的に、同時に使った会議の進め方という面でまだまだオンラインと同じようにはいかないのが現状です。したがって話し合ったり意見を出し合ったはいいけど、結局あまりしっかり落とし込めなかったり、共通理解の上で合意形成を築けなかった、という会議になりかねません。これは直接的な疲労ではないにしろ、精神的な疲れとなる可能性は大いにあると思っています。

単純に慣れていない

最後に、たいていの人はビデオ会議をたくさんやったことなんてこれまでまったくない、という人が多いはずです。人間誰でも慣れていないことをやるのは疲れます。ビデオ会議においては、上に挙げた様々な要因に加え、単に体が慣れていないということも少なからず疲労に影響しているのではないでしょうか。


今回はZoom疲れというワードにフォーカスし、ビデオ会議が疲れるという感覚について、考えられる原因をできる限り列挙してみました。

対策という面ではほとんど踏み込めていませんが、上に挙げたそれぞれの原因からできそうな対策を練っていただければ幸いです。